【解説】RAGの裏で働く「Embedding」と「Rerank」モデルって何?非エンジニアが調べてみた
先日、AIモデルをまとめて使えるサービス「OpenRouter」のモデル一覧を眺めていたときのことです。ずらりと並んだカテゴリの中に、「Embedding(エンベディング)」「Rerank(リランク)」という、見慣れない言葉があるのに気づきました。
「RAG」や「ベクトル検索」という言葉は、AI関連のニュースでなんとなく聞いたことがありました。でも、その裏側にこうした専用のAIモデルが存在することは、恥ずかしながら知りませんでした。エンジニアの方には当たり前の常識だと思いますが、非エンジニアの私にはまったくの初耳です😅
気になって調べてみたら、「検索の裏側」を支える面白い世界が見えてきたので、同じように知らなかった方に向けて、わかった範囲でまとめてみます。
そもそも「Embedding(埋め込み)」モデルって?
Embeddingモデルをひとことで言うと、文章を「意味の座標」に変換してくれるAIです。
たとえば「犬」と「子犬」は意味が近く、「犬」と「自動車」は遠い。Embeddingモデルは、こうした言葉や文章の“意味の近さ”を、数字の並び(ベクトル)に変換します。意味が近い文章どうしは、座標としても近い場所に置かれる、というイメージです。
これのすごいところは、キーワードがぴったり一致していなくても「意味が近いもの」を探せる点です。「愛犬の健康」と検索して、「ペットの体調管理」という言葉の入った文章を見つけ出せる。これが「ベクトル検索」の正体でした。
ベクトル検索と「RAG」のつながり
仕組みはこうです。まず、たくさんの文書をEmbeddingモデルで“意味の座標”に変換して、まとめて保存しておきます。質問が来たら、その質問も同じように座標へ変換し、意味が近い文書を高速に取り出す。これがベクトル検索です。
そして、取り出した文書をそのままAI(LLM)に渡して、「これを参考にして答えて」とお願いする——この一連の流れが、よく聞く「RAG」でした。AIに“関連資料というカンニングペーパー”を渡してから答えさせる、と考えると分かりやすいです。
「Rerank(リランク)」モデルは仕上げの選別役
ここで、もう一つの知らなかったカテゴリ「Rerank」が登場します。
ベクトル検索は速い代わりに、拾い方が少し大雑把です。そこで、集まった候補を質問と1件ずつ丁寧に見比べて、「本当に関係が深い順」に並べ直すのがRerankモデルの役割です。ざっと集めた本を、司書さんが質問にぴったりな順へ並べ替えてくれるイメージですね。
実際、NVIDIAの技術ブログでも、このリランクを加えることで日本語の検索精度が上がる、と紹介されていました。「速く集めるEmbedding」と「丁寧に選び直すRerank」の二段構えなのだと、ようやく腑に落ちました。
しかも、無料で試せるものがある
さらに驚いたのは、これらのモデルが無料でも試せることです。
私が最初にこのカテゴリを見つけたOpenRouterには、NVIDIAの「Nemotron」系の無料Embedding/Rerankモデルや、Googleの「Gemini Embedding 2」などが並んでいました。日本語に強いものだと、「multilingual-e5」や「Ruri」といったモデルもあります(ある検証記事では、日本語で2,000問規模の比較まで行われていました)。
つまり、専門の高価な環境がなくても、個人が“意味で探す検索”を無料枠から試せる、ということです。
実際に試してみたら、教科書どおりではなかった
せっかくなので、ここまで調べた内容を、手元の日本語データを使って自分でも少し試してみました。すると、記事で読んだ“きれいな話”とは違う、現実的な気づきがいくつかありました。
なお、これはきちんとした性能比較ではなく、あくまで小さな手元データで試したときの体感です。
1つは、無料枠の落とし穴です。GoogleのGemini Embedding 2を無料枠で試そうとしたのですが、画面の表示上は「1日◯回まで」に見えても、実際にはまとめて処理(バッチ)したときに“中の1件ずつ”が回数を消費する仕組みでした。そのため、大量の文章を一気に埋め込み直そうとすると、あっという間に無料枠の上限に届いてしまいます。無料で試せるのは本当にありがたいのですが、「回数の数え方」まで確認しないと計画が狂う、と学びました。
もう1つは、Rerankは“足せば必ず良くなる”わけではなかったことです。教科書的には、Rerankを加えると検索精度が上がるとされています(先ほどのNVIDIAの記事もそうでした)。ところが、私が試した組み合わせでは、Rerankを足すとかえって並び順の精度が下がってしまうケースがありました。原因はいろいろ考えられますが、要はデータやモデルとの相性次第で、どんな場面でも効く魔法ではない、ということです。
この“うまくいかなかった”経験のおかげで、EmbeddingやRerankが「何をしていて、どこでつまずくのか」が、記事を読んだだけのときよりずっと腑に落ちました。
非エンジニアが調べて感じたこと
いちばんの発見は、「検索」と一口に言っても、その裏側にきちんとした分業があるということでした。意味を座標に変えるEmbedding、近いものを高速で集めるベクトル検索、最後に丁寧に選び直すRerank。AIというとLLM(文章を書くAI)ばかりが話題になりますが、それを支える“裏方のAI”がこんなに働いていたとは思いませんでした。
そして、これは個人開発者や小さな会社にとっても他人事ではありません。社内のマニュアルやFAQ、過去のメールなどを“意味で検索”できる仕組みが、無料枠から手が届くところまで来ています。「うちの資料を、AIに賢く探させたい」という願いが、現実的な選択肢になりつつあるのだと、NexaLink Labsとしても可能性を感じました。
おわりに
「RAGやベクトル検索は聞いたことがあるけれど、その裏でどんなAIが動いているかは知らなかった」——今回は、そんな私自身の“発見の記録”でした。
エンジニアの方には当たり前の内容だったかもしれませんが、同じように「言葉は知っていたけど中身は知らなかった」という方の、最初の一歩になれば嬉しいです。